保衛部は、原則的に行政機関一群に対する監視活動を行うのみで、党・組織一群に対する秘密監視活動を行うことができない。従って、政治機関には、保衛部や保衛指導員がおらず、政治機関を除外した他の全ての軍事行政機関には、保衛部又は担当保衛指導員が存在する。保衛指導員は、自分が担当した軍事行政機関内の参謀部や政治部の指示を受けるのみならず、自分が所属する軍事行政機関の上級機関に設置された保衛機関の指示を受けている。例を挙げると、人民武力部対外事業局担当保衛指導員は、対外事業局長や、党秘書とは、いかなる行政的、党的関係がない。彼は、対外事業局がある庁舎に自分の事務室を定めておき、必要な場合にのみ現れる。（この保衛指導員は、対外事業局と対外技術総局の2個局を担当している。）彼が所属したところは、総参謀部保衛部であり、従って、総参謀部保衛部長の指示を受け、活動する。しかし、党的統制は、総参謀部内の政治機関から受ける。総参謀部保衛部に所属する保衛軍官又は保衛指導員は、党細胞を構成し、この細胞の中で党生活を行い、総参謀部内の政治機関の統制を受ける。結局、対外事業局を担当する保衛指導員の党生活は、対外事業局内の政治機関が統制するのではなく、上級機関である総参謀部の政治機関が統制するのである。

　党組織及び政治機関は、主として公開された使用を総合し、保衛機関は、公開されない資料を総合していると見ることができる。党組織には、組織線と通報線がある。組織線により総合される資料は、党生活資料となる。党組織及び政治機関は、末端党組織の責任者である党細胞秘書を通して、政治的に全ての軍人（将領、軍官、兵士）に対する党生活資料の報告を受ける。一般的に少将以上級に対しては、6ヶ月に1回ずつ、少佐以上級に対しては、1年に1回ずつ、党生活資料を作成し、上級党組織、政治機関に報告されている。

　党組織、政治機関において総合された資料は、主として人事事業時の参考とされ、欠陥がある者は、その欠陥を是正するようにさせ、自己職責上の業務遂行を良くするようにさせるのが目的である。さらに厳重な欠陥が発見された場合には、党会議において集中批判を実施し、欠陥を是正するように措置する。しかし、党細胞秘書自身が党員大衆により選挙された者であり、また党員の信望があってこそ働きやすいために、政治的生命に重大な汚点を残し得る発言や、行動に対しては報告しない。従って、細胞秘書の報告を通しては、各軍官に対する精確な思想動向を把握するのが難しい。（党組織及び政治機関の活動は、次の機会に、もう少し詳細に論議することにする。）このように、党組織及び政治機関は、主として公開的に活動するのに比べ、保衛機関は、主として秘密要員を利用する特徴がある。ある監視対象を定めるのに6ヶ月乃至1年、時には、数年に渡って秘密要員が集中的に監視するようにする。出勤時間を守ったか、事務室で居眠っていないか、夕方の退勤後、何をするのか、主として誰と会うのか、しばしば通うところはどこなのか、その対象の発言と活動に対して些細なことも逃さず、総合するするようにするものである。従って、保衛局は、該当政治部や、幹部（人事）系統が持っている個人履歴文件の外に別途に全ての監視対象に対する履歴文件及び資料記録簿を持っている。ある対象に対して、幹部系統が持っている文件によれば、階級土台や家庭環境が良くて、思想動向も良いとされているが、保衛機関が持っている文件内容は、正反対である場合が多いのは、このような理由のためである。

　民間人を監視する国家安全保衛部は、秘密情報員を２部類に分けている。１つの部類は、専門保衛一群が労働者、農民等に偽装し、一生の間、秘密保衛一群として働くもので、もう１つは、専門保衛一群ではない者が秘密情報要員として活動するものである。専門保衛一群が秘密保衛一群を行う場合には、自分が労働者、農民として働く職場において、さらに昇進することができなくなる。彼らに対する保障は、通常、彼らの家族に渡る。しかし、普通の人間が秘密情報員である場合は、秘密情報活動に関係なく能力さえ有れば、進級できるようになっている。普通の人間が秘密情報員である場合、階級的土台と家庭環境がきれいな人々の中から選抜される者と、階級的土台と家庭環境、成長背景が悪い人々の中から選抜される者がある。階級的土台と家庭環境が良い秘密情報員は、情報収集による別途の報酬がないが、階級的土台、家庭環境、成長背景が悪い秘密情報員の場合には、報酬があるという。

　一般的に国家保衛部は、住民1千人当たり専門保衛一群を1名ずつ置いているが、軍隊では、兵士（士兵）である場合には、400〜500名当たりに1名、軍官である場合は、200〜300名当たりに1名ずつ置いている。特殊な場合には、30名当たりに1名ずつ置いている。即ち、保衛一群の数字を見るとき、軍隊の場合が民間の場合よりもはるかに多い。

最終更新日：2003/05/01